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【イベントレポート】性暴力被害者支援情報のプラットフォーム「THYME」と性暴力被害者支援について考える

鈴木彩衣音

2023年7月24日(月)に、性暴力被害者支援情報のプラットフォーム「THYME」の卜田素代香さんをお招きして、「性暴力被害者支援について考える」トークイベントを開催いたしました。

今回は、当日に参加できなかった方向けに、イベントの内容を抜粋してご紹介します。

イベント詳細

  • 開催日時:7月24日 19:30-20:30
  • 開催場所: Zoom
  • 参加費用:無料

イベントの内容

性犯罪の裁判を進める中での困難、そしてこれからの性暴力被害者支援のあり方について、お話ししていくトークイベントを開催しました。

イベントページはこちら

卜田素代香さんについて

卜田素代香さん
性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYMEを運営。
新卒就職後に性犯罪被害に遭い、PTSDで1年半の休職や、裁判を経験。
大学時代の専門はジェンダー研究で、産業カウンセラーでもある。
クロ現『性暴力裁判 被害女性が語った15分のことば』の記事でTHYMEの活動認知が広がる。

THYMEのWEBサイトはこちら

主催者について

SISTERS incは、「話しにくい、相談しにくい」問題を安心して相談できるコミュニティです。性暴力をはじめ、ジェンダー・生理などの誰にも話せないことを、誰もが話せる場所にするために活動しています。

性暴力の被害から刑事裁判までどのようなことがあったのか?

イベントの前半では、卜田さんが経験をした、性暴力被害から今日までの刑事裁判で起きたことをお話しいただきました。

卜田さん
卜田さん

私の場合は、見知らぬ人から突然家に侵入された被害だったので、警察に申告した時も すぐに被害届を受け取ってもらえて捜査が始まりました。

詳しい被害時の状況は、こちらの記事で掲載されています。

卜田さん
卜田さん

加害者は証拠が出るまでは黙秘または否認をしていましたが、証拠が出て起訴されて、裁判の手続き準備が始まると、向こう側の主張も変遷していきました。

DNAが出て性的暴行があったことは否定できなくなったので、私が発症したPTSDは性暴力によるものではないと主張をしはじめ、そこが裁判の争点になりました。

 裁判を進めている中で届いた脅迫の手紙…

卜田さん
卜田さん

裁判を進めている途中、私の国選弁護士の事務所に脅迫の手紙を送ってくるっていうような事案が発生しました。

私のTHYMEの活動を知ったことで、全然根拠はないんですが、名誉毀損だと主張したり、被害の責任転換と捉えられる内容の手紙が複数回に渡り送られてきました。

–ここに文章を記載–

 裁判を経験して感じた問題点

加害者こそカウンセリングを受けてほしい

卜田さん
卜田さん

自分の罪に向き合わずに、被害者に責任転嫁する状態から、そこが変わらないと意味ないと思っています。

そのために加害者こそ、治療であったりカウンセリングなど何かしら受けて欲しいですね。

また、日本の制度として、こうした治療の義務付けはないですし、服役した後に実施する刑務所での厚生プログラムにもまだ課題があると感じています。

実際に性犯罪再犯率は13.9%(※)です。加害者が性犯罪を起こさないためにも、こうした加害者の再発防止はより徹底していく必要がありますよね。

※平成27年版 法務省による「 犯罪白書」 第6編/第4章/第4節/2を引用

刑事事件と民事事件で受けられる支援の差

卜田さん
卜田さん

刑事と民事の支援の差をすごく感じるなと思っています。

刑事事件として認められたから受けられる支援がやっぱりあるんですよね。

PTSDの治療費とか、アフターピールの費用や性感染症の検査費用も警察の公費から出るようになります。

ただ、刑事事件として認められる被害がこれまではやっぱりすごく少なかったわけじゃなないですか。

そこも変わっていったらなと思っています。

イベントの中でも、性暴力に理解のある弁護士さんが分からないというお話がありました。
卜田さんの場合は、刑事事件になったことで国選弁護士がつくことができたそうです。※国選弁護士は収入要件を満たした場合に無料で利用できます

法律相談では、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所「法テラス」が存在します。
メールでの問い合わせや、収入要件によって3回まで無料で相談ができる場合もあります。
気になる方はサイトをチェックしてみてください。
詳しくはこちら

最後に今日までの刑事裁判を経て感じたこと

最後に今日までの刑事裁判を経て感じたことをお伝えいただきました。

卜田さん
卜田さん

ここまで来るのに本当にかなり長期間の時間がかかり、それに一定期間は関わらなくてはいけなかったです。

だからこそ、とても被害者一人じゃやっていけないと思います。本当に社会としてきちんとしたサポートが必要だなと感じています。

卜田さんは、被害申告から現在までもうすぐ4年が経つそうです。

4年間の間に、被害によるPTSDと向き合い、主張が変化していく加害者との裁判に向き合い、必要な証拠などを準備されていました。

これは卜田さんもおっしゃるように1人で乗り越えるには負担がとても大きいです。

様々な支援機関との連携や、制度の充実、周囲の友人・家族の理解が広がっていく必要がありますね。

警察に行くのはハードルが高かった

ここからはトークセッション形式でお話をしていきました。

SISTERS
SISTERS

警察に被害深刻するのはとても高いハードルがあったのではないかと思います。

被害に遭われてから警察に通報する時までに、ハードルがあるなと感じたことはありますか?

卜田さん
卜田さん

やっぱりハードルはすごく高くて、被害にあった時に加害者に 「誰かに言ったら会社のメールアドレスに流す」や、「見張ってるから誰か呼んだらわかる」などと脅されたんですよね。

常に「どうしよう、見張られてるんじゃないか」みたいな感覚があり、身が危険だから警察には絶対に行きたくないと思ってたんです。

何かあった時のために、絶対に証拠を残しておかなくてはいけないとは思い、すぐに病院に行きました。
しかし、警察に通報して警察からの証拠採取の依頼がないとできないと言われてしまい、ワンストップセンターに連絡をしました。

「相手がどれだけ自分の情報知っているかも全くわからない状態なので、そのままにしておく方が危ないよ」と教えてくれて、勇気を出して両親とワンストップセンターの支援の人と 一緒に警察に行くことができました。

SISTERS
SISTERS

脅迫まであったのですね..とても許せないことですが、警察には無事に行けて本当によかったです。

結果的に警察に早く繋がれてよかったですか?

卜田さん
卜田さん

警察に早く行くことは本当に必要だと思うんですが、それ以上に、本人が自分の意思でどうするかを選べる事が大事だと思っています。

被害にあった人に情報と選択肢が開かれている状態で、本人が「主体的に選べた」と後から思える事が一番大事だなと考えています。

そのために、情報がきちんとと社会の中で浸透していることも必要だと思いますし、自分の気持ちや考えを聞いてくれたり、自分の考えを整理してくれる人が必要だと思います。

私も警察に行くかどうか迷っていた時に、自分一人だったら多分決断できなかったと思います。

当事者が主体的に選択ができる重要性

SISTERS
SISTERS

本当におっしゃる通りだと思います。

ご本人が自分の望んだ行動ができることで、泣き寝入りのような状態にならずに済みますし、今後の被害と向き合うことにおいても救いになるような出来事につながりますよね。

卜田さん
卜田さん

ありがとうございます。

私自身、被害にあった後の回復に、何が影響するか何が必要かと考えると、やはり自分で行動や選択ができたと思えるかどうかかなと思っています。

自分で選択をしたというそのベースが、「やれることはやったな」という感覚に繋がると思っています。

私自身もやっぱり、これだけ裁判をやって、その後も脅迫にあったりと、大変なことはあったんです。

けれどもここまで全部自分で選択ができたっていう感覚は持っていて、回復にもいい影響があったのかなっと考えています。

SISTERS
SISTERS

本当にそうですね、素敵な言葉をありがとうございます。

最後に、参加者さんにメッセージをお願いします。

卜田さん
卜田さん

今日は私個人の被害ついてお話しさせていただきましたが、それぞれ被害にあった方の状況は全く違うと思っていています。

なので、何が正解とというのは、本当にないと思っています。

それぞれ 一人一人の経験と思いや痛みみたいなものは、その人だけのものだと思うので、大事にして欲しいです。

そしてこのような場で一人ではないを思える人が増えるよう、私もTHYMEの活動を通して作っていければと思います。

SISTERSさんものこういう場があることが、私はもちろん、他の当事者の方にとってもすごくなんか力になることだと思います。

今日はこうした機会をいただきありがとうございました。

参加者からの感想

イベントに参加いただいた方の感想を一部ご紹介させていただきます。

  • 自分で選択して行動したというのが回復に繋がった、というそよかさんの言葉に凄く共感しました。
  • ご自身の体験を話すのは、とても負荷のかかることだったと思いますが、お話いただきとても嬉しかったです。
  • 私も性暴力被害者の当事者です。色々大変なこともありますが、また頑張ろうと思えました。

ご参加いただいた皆さん、素敵な感想をいただき本当にありがとうございいました。

イベントを経て感じたこと

本イベント、「当事者の方が被害後に主体的に後悔のない選択ができる重要性」についてお話しいただきました。

私も過去に性暴力を経験した時に、警察の届け出はしませんでしたが、友人の協力を経て、自分で納得のできる行動をすることができました。
そこからずっと引きずっていた被害について向き合うことができるようになり、回復することができました。

自ら選択する行為を通じて、本来持っていた当事者の力を取り戻しているのかもしれないと思いました。

改めて、性暴力の被害にあった多くの当事者の方が、主体的に後悔がない選択ができるようサポートできる社会を作っていきたいです。

皆さんはこのイベントを通じてどう感じたのか、ぜひSNSなどで教えていただけると嬉しいです。

イベントのアーカイブ視聴の方法

イベントの内容を全て見たいと思っていただいた方

現在、こちらのイベントの配信は、SISTERSの有料会員のコミュニティで展開しております。
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Writer
SISTERS運営 鈴木
SISTERS運営 鈴木
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