デートDVとは?具体的な事例をもとに問題点と性教育の必要性を解説

近年、3組に1組が被害にあっていると言われているデートDV(※)。
その実態は、殴る蹴るなどの暴力だけではなく、SNSを通じた監視、言葉による精神的な支配、など、形を変えて大切な関係を蝕んでいきます。
本記事では、身近に起こりうるデートDVの具体的な事例を解説。
もしあなたが、あるいは大切な友達が被害に遭ってしまった際に、どうすれば良いのか、その対処法を詳しく掘り下げていきます。
※平成 28 年 全国デートDV実態調査報告書より
デートDVとは
デートDVとは交際中の親密な関係にあるカップルの間で、一方が他方に対して繰り返す暴力のことです。

一般的なDVは、夫婦間(婚姻問わず)の間で一方が他方に対して繰り返す暴力のことを言い、どちらも人権侵害に当たる行為と言えます。デートDVはDVと異なり、DV防止法に適用されないため、法律的な処罰ができないという違いがあります。
デートDVの事例
デートDVは、身体的な暴力だけを指すわけではありません。
主に5つの形態があり、相手を自分の思い通りに支配しようとする行為は、すべて暴力です。
身体的暴力
恋人の体に直接危害を加える暴力です。
殴る・蹴るといった行為はもちろん、髪を引っ張る、物を投げつけることも含まれます。

- 会話中に気に入らないことがあると殴るふりをして怖がらせ、自分の言うことを聞かせようとする
- 相手の髪の毛を掴んで引きずったり、肩や胸などを強い力で突き飛ばしたりして、力で支配しようとする
- 部屋から出ようとする相手の腕を力ずくで掴んだり、ドアの前に立ちはだかったりして行く手を阻む
精神的暴力
暴言や脅しで相手の心を傷つけ、支配する行為です。

- 「バカ」「デブ」などと相手の容姿や能力を繰り返しけなして、自信を失わせる
- 別れ話が出ると「お前(あなた)がいないと生きていけない、手首を切る」と脅し、罪悪感で相手を縛り付ける
- 大声で怒鳴ったり、機嫌が悪くなったりしたことを「全部お前(あなた)が悪い」と相手のせいにする
- 友人や家族と会うのを極端に嫌がったり、「誰とどこにいるのか」と常に連絡を強要したりして行動を支配する
- 何か気に入らないことがあると、話しかけても完全に無視したり、冷たい態度をとり続けたりして精神的に追い詰める
性的暴力
相手の同意なく性的な行為を強要する暴力です。腕力で体を抑えつけるなどの暴力や場の雰囲気で「NO」と言えない状況を作り出し、性的な行為に及ぶことも、相手の意思を無視した性的暴力にあたります。

- 相手が望んでも様々な理由をつけて避妊に協力せず、妊娠や性感染症への不安を押し付ける
- 「別れる」と脅したり、「プレゼントをあげたから」と見返りを求めたりして、性的な行為を断れない状況に追い込む
- 嫌がる相手に裸などの性的な写真を撮らせたり送らせたりし、「拡散するぞ」と脅して更なる要求をする
- 行為の途中で相手が「痛い」「やめて」と拒絶しても、自分の欲求を優先して無視し、無理やり続ける
- 相手が寝ていたり、お酒に酔っていて正常な判断ができない状態に乗じて、同意なく性的な行為におよぶ
経済的暴力
お金を使って相手を支配し、従わせようとする行為です。最近ではSNSの影響で、高校生が自分では購入しづらい高価な商品を、パートナーに求めるケースも増えています。こうした要求も経済的な暴力にあたるため、注意が必要です。

- 毎回のデート代や食事代を「好きなら当たり前」などと言って、すべて相手に支払わせる
- 「すぐ返すから」と言って繰り返し借金をし、返済を求めると怒ったり無視したりして踏み倒す
- アルバイトをしている学生が払えないような高価なプレゼントを要求する
- 相手のアルバイト代の使い道を細かくチェックしたり、「自分のために使え」とお金を奪おうとする
- 自分の趣味や遊ぶお金のために、相手の名義で借金をさせたり、携帯電話のアプリで高額な課金をさせたりする
社会的暴力
交友関係や行動を制限し、相手を社会的に孤立させる暴力です。

- 「自分だけを見ていてほしい」といった言葉で束縛し、異性の友達の連絡先を勝手に削除する
- 「やましいことがあるのか」などと言い、スマートフォンのパスワードを教えるよう強要し、LINEやSNSのやり取りを監視する
- 位置情報共有アプリを強制的にインストールさせ、常に自分の居場所を把握したり、行動を逐一報告させたりする
- 「自分より大事なのか」などと言って、友人との予定や、アルバイト、部活動などをやめさせる
- 本人が嫌だと言っているのに異性との遊びを行かせない
- 別れ話のもつれや些細な喧嘩をきっかけに、交際中に撮影した性的な画像や動画を、相手に無断でインターネット上に公開すると脅したり、実際に公開したりする(リベンジポルノ)
デートDVチェックリスト
以下の項目に当てはまる場合は、デートDVを受けている場合が多いです。
現在・これまでのパートナー関係で当てはまっていないか確認してみましょう。
LINEの返信が遅いと怒ったり不機嫌になったりする
勝手にスマホの中身を見たり、GPSアプリ入れて行動を監視する
他の異性と話さないように束縛する
デートのために友達や家族との約束や大事な予定をキャンセルさせる
怒ったり、優しくなったりを繰り返す
自分の好みの服装や髪型を押しつける
体型や容姿についてけなしたり、嫌なことを言ったりする
デートの費用をいつも払わせる
別れるならこれまでのデート代を返せと言う
嫌がっているのに体をさわる
裸の写真を送って欲しいと要求する
デートDV被害に遭うとどんな状況になるのか
デートDVの被害は、心と体に深刻な影響を及ぼします。被害者の27%が「自分に自信がなくなった」と回答したほか、不眠や心身の不調に悩み、中には「生きているのが嫌になった」と感じる人も少なくありません。

周囲からは「別れればいいのに」と安易に思われがちですが、関係を断ち切れないのには複雑な理由があります。「相手が変わってくれるかも」という期待や、「別れたら仕返しが怖い」という恐怖心、そして「相手には自分が必要なんだ」という思い込みが、被害者をその関係に縛り付けてしまいます。
デートDVの現状と問題点
内閣府の調査によると、交際経験がある人のなかで、恋人から何らかの暴力を受けたことがある人は、女性で22.7%、男性で12.0%にのぼります。

これは、女性の約4.4人に1人、男性の約8.3人に1人がデートDVを経験したことがあることになります。
また、デートDVの被害経験は10代・20代の若年層に集中していることが分かります。

何らかの暴力を受けたことがある被害者のうち、約53%が「20代に被害にあった」と回答しており、最も多くなっています。次いで「10代に被害にあった」人も約29%にのぼります。
出典:男女共同参画局 令和5年度男女間における暴力に関する調査より
デートDVだと思ったら
自分が被害にあってしまったら
恋人からの暴力に「自分が悪いのかも」と悩むこともあるかもしれません。しかし、どんな理由があっても、あなたは悪くありません。
デートDVの相談窓口
- 緊急の危険がある場合
- 警察(110番通報)
- もし、体に危険が及ぶような緊急性を感じたら、ためらわずに「110番」へ連絡してください。殴る・蹴るといった行為は、恋人同士であっても暴行罪や傷害罪にあたる犯罪です。あなたを守ることを最優先に行動してください。
- 警察(110番通報)
- 学生の場合
- 学校の先生
- あなたが学生の場合、「これってDVなのかな?」と悩んだり、誰かに話を聞いてほしかったりしたら、まずは保健室の先生やスクールカウンセラーなど、話しやすい大人に相談してみてください。あなたの気持ちに寄り添い、一緒に考えてくれるはずです。
- 学校の先生
- まずは悩みを聞いてほしい場合
- 女性専用のお悩み相談窓口
- 誰かに話を聞いてほしい時は、一人で抱え込まず、学校や自治体の相談窓口、SNS相談などを頼ることが大切です。相談することは、自分を大切にするための勇気ある一歩です。
- 性的な被害について相談したい場合
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
- 性犯罪・性暴力に関する相談窓口です。産婦人科医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携しており、全国共通の短縮ダイヤル「#8891」にかけると、最寄りのセンターに繋がります。
友人や周りの人が被害にあっていたら
まずは「話してくれてありがとう」と伝え、責めずに話を聞く姿勢が何よりも重要です。
「あなたにも責任がある」「なぜ別れないの?」など、被害を軽く見たり、相手を責めたりする言動は「二次被害(セカンドレイプ)」と呼ばれ、相手をさらに深く傷つけます。本人の心に寄り添い、必要であれば専門の相談窓口があることを、そっと教えてあげましょう。

学校の先生が生徒の被害に気づいたら
生徒の「安全確保」と「心のケア」を最優先に、決して一人で抱えず、学校組織として対応します。
・安全な環境で話を聞く
プライバシーが守られる場所で、生徒のペースに合わせてじっくりと話を聞き、「話してくれてありがとう」と肯定的に受け止めてください。
・解決策を強要しない
「すぐに別れなさい」などと指導するのではなく、生徒自身が「どうしたいか」を考え、決定できるよう支援する姿勢が大切です。
・チームで対応する
必ず管理職(校長・教頭)に報告し、スクールカウンセラーや養護教諭と連携。生徒に選択肢を示し、自己決定を支えるチームとしてサポートしてください
性教育の必要性
デートDVの防止をはじめとする性教育は、すべての子どもが自分と相手を尊重し、健全な人間関係を築くためには不可欠な学びであると言えます。
一つは、トラブルの未然防止に繋がります。恋人との間に起きる悩みや対立の健全な解決方法を知ることで、生徒間の深刻なトラブルや、それに伴う精神的な不調、不登校といった事態を防ぐ効果が期待できます。
そしてもう一つは、生徒が将来にわたって対等な人間関係を築く力を育むことです。相手を尊重し、自分も大切にするコミュニケーションを学ぶ経験は、特定の恋愛関係だけでなく、生涯にわたる良好な人間関係を作ることに繋がります。
SISTERSでもデートDVや性暴力の防止などの性教育の授業を行っています。
授業内容の詳細や、ご依頼・ご相談については、こちらのページをご覧ください。

